心理臨床の詩歌療法について学習しました。
言葉とは何か?
1.情報交換(記号)としての「ことば」
患者さんから症状を聞く、経過を聞くなど
情報伝達の手段
2.「ことば」の持つ創造性
自分の気持ちを俳句や歌、詩などによって表現
比喩表現もそのひとつ
患者さん「頭が重い」
ドクター「どんな感じですか?」
患者さん「脳みそが水に浸かっていてその中に針が2~3本ある感じ」
ドクター「おおー なるほど なるほど」
→ 比喩的表現によってイメージとして認識できる
3.コミュニオン
親しい者同士(家族や共同体など)において
「やあ」「おはよう」「どう?」「おっす」
などのような簡素な表現でも気持ちが通じること
人間の交流における最も基本となるもの
コミュニケーションの土台
* 心理療法で主として使われるのは2の創造性と3のコミュニオン
心理療法の基本
患者さん → 心の中を表に出す(なかなか難しい)
ドクター → 心の中に固く閉ざされているものをいかに表に出してもらうか
患者さんに心の中を表に出してもらってはじめて通じ合うことができる
心の固い殻をやわらかくするもの=言葉の創造性(やわらかい言葉)
情報伝達としての言葉=正確性が求められる(かたい言葉)
心理療法の場においてやわらかい言葉でコミュニケーションをとることが有効なことが多い。しかしやわらか過ぎても却って患者や治療者が混乱することもあることに注意が必要である。
治療者はなるべくたくさんの例えや比喩、俳句表現などの知識を持っていたほうが良い。
~ 詩歌療法 ~
詩歌とは
→ 自由詩・俳句・短歌・連句など
・詩、ことばのもつ治療的意義
1.詩的な表現は自由である
詩の表現
↓
自由に言葉を並べることができる
↓
人間の心の底にある情動が表現されやすい
2.詩の世界と心の世界の共鳴・共感
聞き手は詩を聞いてその人の心の奥が理解できるようになり
詠み手は自分の心の世界が詩によって表現されることにより心が解放される
3.詩を間に置いてのやりとり
詩を書くときその人は聞き手を想定して書いている
→ その聞き手には自分自身も含まれている
患者さんの詩や俳句を治療者が聞くとき共感ばかりではダメ
* 患者さんが心の中のものを表現して、治療者がそれを理解し、それらのやりとりの中で患者さん自身が自分の心の問題点に気づいたり、新たな自分、新しい世界を発見して現実世界で生きて行くことができるようになる。
イメージとしては
患者さんの心の世界 = 海
治療者の現実世界 = 陸
治療者が立つべき位置は海と陸の境目の浜辺が望ましい。
つまり治療者が現実世界の陸にいたままではいつまでも患者の心の奥が分からない。
共感ばかりで患者さんの心の海に入ってしまうとそのまま溺れてしまう。
うつの人Aさんとその友人Bさん
Aさんに共感しすぎるとBさんもうつに
:俳句について:
わずか17文字の表現で長々と話を聞くよりも患者さんの心がよく分かる場合がある。
・言葉の持つ「響き」
・患者さんに声を出して読んでもらう→「調べ」がわかる
・詠んだ後の「しじま」の共有・共感
:俳句療法の利点:
1.安全な枠組みの中で、作りやすい
2.日常の「生きたコミュニケーション」の媒体となる
3.日常的関心の回復が期待できる
4.言葉の回復を助ける
5.葛藤の溶解、情動のカタルシスをもたらす